4.「考える勉強」のもたらすミラクルな成果と感動体験。
短期間で飛躍的に成績が伸びる。
私自身の体験。
さて、ここで私自身の経験を少し語ってみたいと思います。私は中学受験で志望校に合格し、入学後中学3年の頃までは頑張って勉強をし、それなりに成績も良かったのですが、色々なことが重なって、高校生になって少し経ってからほとんど勉強しなくなってしまいました。
で、浪人生として予備校に通うことになったわけですが、何せ高校に入ってからの勉強ができていなかったので、なかなか思うように勉強が進まない科目があったんです。
それは、「物理」でした。
もう、これは自分にとって完全に鬼門のような科目になってしまっていて、気にはしていたものの、受験直前までほぼ手つかずのまま放置状態で、結局気付いたら入試一ヶ月前になっていました。
入試1ヶ月前の時点で、限りなく0点に近い実力。それが物理での私の状況でしたが、志望する大学の基準と他の科目の点数の推移から考えると、物理で80点は取る必要がありました。
多少の波はあったものの、他の科目は何とかなりそうな状況だったのですが、物理だけはどうにもならない。多分、0点とか。10点とか。そんな状況。物理がそんな状況なら、他がいくら良くても、さすがにカバーしきれない。
どうするか。
きっとここで私は考えたんだと思います。
どうするか。
当たり前ですよね(笑)。
物理10点とか、0点とか、そんなんですから。
そりゃあ、考えます。
でもね、考えても始まらないし、何か不思議と不安はあまりなかったんですよね。
そんな感じで、「物理、どうしよっかなぁ。どうしようもないよなぁ。でも、どうにかしないとなぁ。」と少し意識するような状態で過ごしていたとき、
ある日、予備校の教室の後ろの方に何かをドサッと置く音が聴こえたんですよね。
「石田くん、これ、私の友達の〇〇くんが以前使っていて今はもう使わなくなった参考書・問題集。欲しいものあったら、あげるって。」
突然参考書バザーならぬ、参考書差し上げますデリバリーがやって来たわけですね。
何やら色んな本が並んでいたわけですが、その中で、1冊気になる本がありました。「☐☐流物理の大原則」。なんかそんなタイトルの本でした。
とにかく、物理の本だったわけです。その本のキャッチコピーは、
「この本があれば、物理は1ヶ月でマスターできる。」
そんなような感じでしたね。
ぬわぁんだと?物理が1ヶ月でマスターできるだと?
そんなこと、できるわけ…あんのか?ホントに?
いや、でも、できるなら、ぜひ…
気付いたらその本を取っている自分がいましたね。そのときのワクワク感とドキドキ感は、今でも覚えています。
なんか、すごい本に出会ってしまった…気がする。
早速帰りの電車の中でその本を読み、空き時間を利用して、あっという間に読み終えました。
「なんか、この本、自分に合ってる気がする。」
そう思った私は、上巻だけだったその本の下巻を書店で購入し、下巻も瞬く間に読み終えてしまいました。
あれだけ分からなかった物理の問題が、その本の解説に従って解いてゆくと、不思議と簡単に解けていったんですね。
結局、その本の作者による物理の過去問演習の本も購入し、「この本だけで」ではありませんでしたが、「この本の作者の本だけで」という状態で、物理のテスト本番を迎えることとなります。
結果は、88点。
「よっしゃー!」ミスをしていなければ90点台だったはずなのですが、入試1ヶ月のあの状況を考えれば、もう、十分すぎる結果でした。
英語・数学・国語でも嬉しいミラクルが立て続けに起こり、志望していた大学に無事合格することができました。
これだけの奇跡を、一度に経験できたことは、その後の私の人生観をガラッと変えることとなりました。
生徒の体験。受験1ヶ月前に受験勉強を始めた、勇気ある少年の話。
大学入学後から、塾講師や家庭教師など様々な「教える」仕事に携わっていたわけですが、ある日家庭教師センターから1本の電話がかかってきました。
「先生、実は見てほしい生徒(Hくん)がいるんです。入試まで1ヶ月しかないんですけどね。今から8科目、仕上げないといけないんですよ。」
「えっ!?」
体験授業をしにHくんのお家に向かったところ、
「現在受験勉強は全くしていない状態なんですが、1ヶ月で何とか合格したいんです。」
とのこと。
これまで受験勉強をした経験がなくて、たった1ヶ月で8科目を仕上げる。
無理でしょ。
でも、無理だと言っている場合ではありません。まずはHくんの実力がどれぐらいなのかを見てみることから始めます。
まずは算数から実力を見てみたのですが、確かに受験勉強をやっていないと言っている通り、通常ならサッと解くべき問題で手こずっている様子が伺えました。
しかし、ヒントを出しながら導いていってあげると、自力で正答にたどり着くことができる場面もありました。
「この子はいける。ひょっとすると、本当に合格するかもしれない。」そう思った私は、授業後お父さんとお母さんにその旨お伝えしました。
そこから、「たった1ヶ月で8科目を仕上げる。」という、途方もないミッションに向かって、関係する全員がそれぞれの立場で全力を出し続けるということをゆきました。
家庭教師の時間と自学自習の時間、お父さんがHくんの勉強を見てあげる時間をうまく組み合わせ、絵を描くのが好きなHくんの興味に沿った形で超効率的な勉強法をお伝えしてゆきました。
教師である私がいくら盛り上がっても、肝心のHくんが乗り気でなかったならどうしようもなかったのですが、幸い本当に楽しみながら全ての勉強に取り組むということをしてくれました。
限られた時間の中で、いかにしてスピーディに基本を身に付け応用力も同時に伸ばしてゆけるかの勝負でした。
まさに、「考える勉強」と「身に付ける勉強」の両立を完全な形で展開できるかが問われている状況でした。
着実に実力が伸びている部分となかなか実力がついてゆかない部分があったHくんでしたが、とにかく受かりたい一心で入試本番までみんなで駆け抜けました。
入試前日に思わぬハプニングがあり、本気で焦っていたHくんでしたが、
入試本番ではちゃんと力を出し切り、見事志望校に合格することができました。
「合格おめでとう!」
「ありがとうございます!」
十分に実力を付けていたHくんの合格を確信していた私でしたが、指導者として素晴らしい経験をさせていただいた奇跡には、感謝の気持ちでいっぱいでした。
Hくんの指導を依頼してくださった家庭教師センターの方には、
「先生、本当ですか?素晴らしいです。まさに石田マジックですね。」
というお言葉をいただき、このような奇跡を目の当たりにし経験できたことを心の底からありがたいと思うばかりでした。
奇しくも、「入試1ヶ月前」という共通点でつながっていたHくんと私。
ひょっとすると、浪人時代のあの時に、入試1ヶ月前の時点で物理をあきらめてしまっていたら、友達の友達があの本を持ってきてくれなかったら、Hくんの家庭教師をさせていただくことも、ともに合格まで駆け抜けみんなで奇跡を体験し感謝することもなかったのかもしれません。
まさに、人生は小説よりも奇なり、です。