やる気を出させる方法
「先生、どうすれば子どもがやる気を出すようになるんでしょうか?」
「やる気を出させるような指導をお願いします。」
「あの子は、ちょっとしたきっかけがあれば、やる気を出してくれると思うのですが…」
よくあるご質問、ご要望、つぶやき(笑)です。
僕が指導をする生徒さんには、親御さんもおられる話し合いの場で、このように言っています。
「俺がキミにやる気を出させることはできない。なぜなら、やる気は自然に出てくるもんであって、無理やり出させるようなもんじゃないから。
でも、俺自身が勉強して受験して喜んだり悲しんだりしたときの体験、今まで指導してきた生徒たちの経験、そのときにその子らと一緒に感じたこと、こういうことなら話すことができる。
そういう話を通して、キミが何か感じるもよし、何も感じないもよし(笑)。
それはキミの自由だ。
そこからやる気が出てくるようになるときも、ひょっとしたらあるかもしれない。でも、それは結果であって、目的じゃない。」
こういう話をすることによって、心の中の導火線、「やる気スイッチ」みたいなものが入って、勉強をし出す子もいれば、そうでない子もいます。
それは、その子がその時にどういうステージにいるかによって変わってきますね。
ですから、私は、自分の指導によって生徒たちがやる気を出すようになるかどうかには、あまり気を配っていません。
だって、それはその子自身の選択であって、僕がどうこう言うことではないですから。
そういうところに気を配るのではなく、自分自身の体験、自分自身の思い、自分自身という人間をどれだけぶつけてゆけるか。そこに全力を賭けています。
これは私の考えですが、
「本当の意味のやる気」というのは、自分が1人になったときに、自分自身と向き合って、何かを感じ、思い、考える…そういった時間の中でこそ、瞬間的に生まれ、あるいは徐々に育まれてゆくものだと思うんですね。
ですから、親や教師が「子どものやる気を出させよう」と試行錯誤をしているうちは、残念ながら「本当の意味のやる気」は出てきにくい。「やる気を出させる」ことに成功したかのように見えることもあるかもしれませんが、長続きしなかったり、反動が激しかったり(笑)。
むしろ、周りの大人が半ばあきらめ、そういう「働きかけ」の類のことを一切やめたとき、子どもが1人で自分自身と向き合う瞬間に、「ふっ」と現れてくるもの。
それが「本当の意味のやる気」だと、私は考えています。
僕自身の経験です。
私は、中学生の時はかなり真面目に勉強をしていて、成績もそれなりによかったのですが、高校に入ってから、まったく勉強しなくなりました。
毎日ファッション雑誌を見たり音楽雑誌を見たりしながら遊んでばかり。
そんな息子をうちの親はかなり心配していたようです。
大人になってから両親から聞いたことですが、当時うちの両親は、私が「無気力症候群」なのではないかと思い、悩んでいたようです。
ある日、母親が本屋さんに行ってそれに関する本などを買って読んでみたところ…
「あっ、あの子は無気力症候群ではないわ。だって、勉強には全くやる気を見せないけど、その他のことには夢中になっているみたいだから。」
という結論にいたったそうです。
それからは、両親は私のことを「あきらめ」ました。文字通り、放任したのです。
そうすると、あら不思議(笑)、ある日突然、息子が勉強をし始めたではありませんか。
「どうしたんだろう、急に。何かあったのかしら。」
なんのことはない。
ある小説に出会い、その主人公に強い憧れを抱き、
「こんな人間に僕もなりたい。」
と、「夢」を持ってしまったので、「彼」は、自発的に勉強を始めたのでした。
まあ、スタートが遅すぎたため、一浪することにはなりましたが(笑)…
何かについて、心配したり働きかけたりする。そのこと自体はもちろん、必要なことでしょうし、また、大事なことでもあるでしょう。
しかし、そういった働きかけをしきった後に、
「もう、無理。あきらめよう。」
という、手放しの瞬間がやってくる。
そういう瞬間に、「何か」が起こる。そしてその「何か」は、より大きな「何か」につながってゆく可能性を秘めていたりする。
こういったことは、いろいろなことについて、私たちが経験していることなのかもしれません。
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